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低コスト水素製造法(公知化情報)

水素実質0円

何でもやるコンサルには、怪しい仕事がやって来ることがしばしばあります。

かつてのように倫理的にいかがなものかみたいな案件が来ることはなくなりましたが、「町の発明家」みたいな人から手伝って欲しいみたいな話はしばしばやって来ます。いわゆる「マッドサイエンティスト」みたいな人の話が来るわけです。

多くはチラと話を聞いただけでアウトなもの(理論的にツジツマ合わない)がほとんどですが、たまにこちらから「こうすれば色々ツジツマ合いますね」と提案できるものもあります。それは良いのですが、たいていの場合立ち消えになってしまったり、他のもっと安いことを言う人と組んだりして面白くない展開になりがちです。まぁマッドサイエンティストにはお金がないですからしょうがないですね。

ここに挙げるものは、そういった話に対してこちらからアイディアを提案したものです。

最初に言っておきますが、たいていこれらの話の時にNDAは結ばれてはいません。と言うか、それ以前の段階で話が消えます。また、仮に結んでいたとしても「NDA締結前から公知」とか「こちらが先に提案した」ものについては大抵のNDAでは適用除外されます。ここで挙げるものは、そういったものの一つです。他人の知財をNDA破って勝手に公開しているというようなものではありません

この情報は公知なので公知です。ですから、誰でも好きに使うことができます。ただし、ここに書いていないこともあります。これについてはご相談下さい。知っていることであれば先発明を主張しますし、そこをあなたが自分で考えればあなたのものです。

ちなみに私(生越)は化学はほぼ素人ですが、素人の私が調査してもこの程度のことはわかるという話です。

原理

元々のアイディアは

硫酸と鉄を反応させると水素が発生する

というものです。多分高校の化学でやりますね。元のマッドサイエンティスト氏は大まじめにこの話を持って来ました。多少アレンジされているのですが、まぁ要するにこういったことです。

これ自体に特に面白いことはなく、硫酸(H2SO4)の水素イオンが鉄と置換して硫酸第一鉄(硫酸鉄II)と水素になるという反応です。

水素製造という観点で計算すると、水素1kgを生産するのに、鉄27.7kg、硫酸(100%換算)48.65kgが必要になります。これは高校化学の計算問題ですね。コストとしては、だいたい1kg 2400円程度になります。これは工業用濃硫酸と鉄スクラップの価格から算出できます。

現在、水素1kgあたりの単価は2000円程度なので、これだけ見るととても使いものになりませんが、それでも割といいところまで行けるなということはわかると思います。もっとも日本政府はこれを1200円くらいにしたいという意向があるようです。それと比べると、ちょっとコスト高ですね。

こういった「金属と何かを反応させて水素を生成する」ものは、コスト以前にエネルギー的にツジツマが合わないものが少なくありません

たとえば、金属ナトリウムと水を反応させれば水素を発生できますが、金属ナトリウムを作るには電気が必要となるので、エネルギー収支的には水を電気分解して水素を発生された時よりも効率を良くできません。

金属マグネシウムや水素化マグネシウムと水を反応させるというものもありますが、これは生成手段と言うよりは輸送手段として考えられているようです。水素を運ぶのは大変ですから、輸送手段が解決するだけでもメリット大です。でも製造には使えません。水素化マグネシウムを作る時には水素を使います。

アルミニウムも同じように使えますが、アルミニウムは不動態を作りやすいので、ちょっとした小細工が必要になります。また、アルミニウムは「電気の缶詰」と言われるくらい、精錬に電気を必要としてしまうので、ナトリウムを使うのと同じ問題を抱えています。アルミニウムのこの辺の反応は、水素製造よりは二次電池として考える方が良いようです。

鉄の精錬はいろんな方法がありますが、そもそも今回の用途ではスクラップ由来で問題ありませんので、製造に必要なエネルギーのことをあまり考えなくても済みます。単に鉄スクラップの市場価格さえ心配すれば良いです。アルミニウムはスクラップでも高価なので使えませんけど。

硫酸はその製造プロセスの中に電気が必須というものはありません。SO3(三酸化硫黄)とH2O(水)を反応させるだけですし、SO2(亜硫酸ガス)をSO3にするのも触媒を使った酸化です。つまり、電気を使わなくても水素の元が作れるという点が優れていると言えます。また、反応で余分な水素が発生するというもったいないことも起きません。なので、反応させるものとして硫酸は持続可能性があります。また、硫酸は化学物質の中では比較的安全なものなので、使うのに神経をあまり使わないで済みます。環境流出しても、放っておけば無害に消えてくれます。まぁ、直接触ったりすると大変ですけど。

塩酸も同じように反応して水素を出すのですが、これの製造は食塩水の電気分解を使うので、結局電気を使ってしまうということと、製造時に余剰の水素が出てしまう(これは副産物水素として使われます)ので、あまり嬉しいものではありません。また分子当たりの水素の量は硫酸の半分になるのも不利です。まぁ、食塩水の電気分解をむしろ水酸化ナトリウムの製造プロセスと見れば塩酸は副産物ということになるので、あるいは使う余地があるかも知れません。

改良

ここからが私の提案です。と言うか、当のマッドサイエンティスト氏も同じことを思っていたようですが、黙っていたようです。まぁ、私に見破られてしまうわけですけど。先に見破ることができれば、NDA的には勝ちです。まぁ勝負じゃないんですけど。

単純に硫酸と鉄の反応だけではコストが合わないのですが、ここで副産物として生成してしまう硫酸第一鉄について考えてみます。

硫酸第一鉄の価格は、1kg当たり最低で50円程度のようです。純度を上げたり販売単位を小さくすると、500円とかになるようです。

食品グレードだと1kgだと3000円くらいですね。

純度の低いものについては、今は主にチタン精錬の廃液から作るようです。

さて、1kgの水素を作る時には、約50kg程度の硫酸第一鉄が生成されますから、これを仮に単価50円/kgで販売できたとすると、2500円になることがわかります。とすれば、「水素1kgが2400円」がチャラになってしまいますね。つまり、

水素実質0円

が実現できてしまいます。凄いですね。

塩酸だと同じように塩化第一鉄が生成されます。これも用途としては硫酸第一鉄と似たようなものがあります。

問題点

もちろんオイシイ話には罠があります。ここでは2つだけ挙げておきます。問題には化学的な問題と経済的な問題があります。

ここに挙げた他にも問題とその解決があるので、必要な方はコンサル契約をお願いします。

反応が途中で止まる

反応式自体は簡単なんですが、反応速度を上げるために濃硫酸を使うと、この反応は一瞬で止まります。と言うか、鉄は常温では濃硫酸と反応しません

これは「不動態」と呼ばれるものが出来てしまって、反応が止まってしまうからです。

これには簡単な解決があって、硫酸の濃度を下げてやります。20%くらいの硫酸にすれば、不動態が出来ずに反応をしてくれます。反応はしてくれるのですが、反応速度は落ちますし、廃液の量は増えるし、濃度が薄いので結晶にするのにエネルギーが必要になってしまいます。水溶液のまま使う分には問題にはなりませんけど、輸送コストがかかってしまうのですよ。

このことについては解決方法と共に逆に利用してしまうということも出来ます。ここについては、コンサル契約と言うことで(またかい)。

大プラントに出来ない

ここに書いた計算に嘘はありません。ですから、硫酸第一鉄を卸す先さえ見つかれば、自分でやっちゃおうかと思っているくらいです。硫酸第一鉄売って燃料電池使って売電すれば、実質金の成る木を持っているようなものです。この辺の収支計算は既にしてしまっています。

そういったものなので、話を聞いた人は水素をどんどん生産するプラントを作れば!と思ってしまうのですが、ここに罠があります。

一番の問題は原料の割に生成される水素が少ないという点です。鉄を使って硫酸から水素を取り出すような反応なのでしょうがないですね。ですから水素製造プラントとして水素を大量に作ろうと思うと、巨大なバックヤードが必要になってしまいます。

また、副生成物である硫酸第一鉄の量が多いというのも障害となります。

硫酸第一鉄自体は用途が結構あって市場性も高い物質なんですが、かと言って「水素生成プラント」としてどんどん作られてしまえば、市場崩壊を起こしかねません。副産物をアテにするものは全てこの危険があります。となると、販売単価も下がってしまって、当初の目論見が外れてしまいます。

ただ、このことについては「水素は運びにくい」という点も含めて考えれば、大プラントにすることよりはコージェネレーション的なシステムにすることで市場崩壊も起こさずにメリットを享受できるのではないかと思います。あまり爪は伸ばさない方が良いです。

まとめ

このように、一見「日本的製鉄法」のような馬鹿げた生成法に見える反応ですが、目線を変えてやれば実用にできる可能性はあります。

このプロセスについてはそこそこ「行ける」と思って取り組んだものなので、収支計算やパンフレット的なものまで作ってあります。もちろん、システム設計もある程度出来ています。制御装置については弊社で受注するつもりでした。つまりはその程度に出来ています。ちなみに、サムネ画像はパンフレットを作る時に作った画像ですw

興味のある企業様からのお問い合わせお待ちしております。

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