ハードウェアからサーバ・アプリまでワンストップで開発

弊社、何かアイディアが出る度に「公知化」しています。

公知化情報

また、自社のものとして開発したものは、随時オープンソースにしています。

waspcojp

つまりいわゆる知財に関しては

原則公開

にしています。

弊社の知財戦略

リードで書いたように、弊社の知財戦略は「原則公開」です。

もちろん、直接顧客のために書いたコードを勝手に公開したり、顧客から入手した情報を勝手に公知にしたりはしませんが、弊社に権利があると見做せる知財については、基本的に「公開」です。具体的には、

  • 弊社が自社のために開発して汎用性が高いと思われるコード
    さすがにウェブサービスとしてリリースしたものは面倒なだけなのでしませんが
  • 弊社が自社のために作成した文書
    営業活動のために書いたものや独自に作成したもの
  • 顧客等と無関係に出したアイディア
    価値のありそうな「思いつき」です
  • 流れた商談の時に弊社から出したアイディア
    NDA外ですから

については「公開」としています。逆に非公開とするものは

  • 弊社が特定顧客のために開発したコード
    許可があれば公開しますが、話がなければ非公開です
  • 弊社が特定顧客のために作成した文書
    開発文書の他に、「顧客名の入った提案書」も含みます
  • 顧客のあるプロジェクトのために弊社が出したアイディア
    「アイディア」の取り扱いについての契約に従います
  • 成約した商談の時に弊社から出したアイディア
    本来NDA外だと思いますが、せっかくですから

です。

ライセンスとしては、

ソフトウェア
内容に応じてOSSライセンスの中から選択する
文書
クリエイディブコモンズのライセンスの中から選択する
特許性のありそうなアイディア
「公知」ということでパブリックドメインとする

ということを前提とし、ソフトウェアと文書のライセンスに関しては、弊社と利用者の権利の最大化とバランスを図ります。

考え方

いかにも利他的な方針のように見えますが、そうではありません。あくまでも弊社の都合です。

そもそも弊社は知財保護のためのリソースを持っていません。同時に、知財を現金化する術を持っていません。ですから、知財保護をすることによって収益を増やすことはあまり期待できません。

技術系の会社ではしばしば「こんだけ特許持ってるんだぜ」的にホームページ等に書いてある会社もあるのですが、内容によっては「しょーもない特許ばっかりじゃん」みたいな評価を受ける危険性もあります。と言うか、正直いろいろ「怪しげな会社」を紹介されることがある身(投資屋さんとかもそうかも知れませんね)だと、ついそういった目で見てしまいます。多分、同じ目線を持っている人は少なくないと思います。

知財を独占して収益化出来なければ、あるいは独占するためのコストが大きいとなると、独占しない方がお得ということになります。もちろんそれによって自分が使用権を失なうようなことは困るので対策が必要ですが、そうならないようにするという前提で独占しないわけです。

この辺については、

IoT認証システムの特許について(2) 特許化しなかった理由

こちらに書いてあります。

ソフトウェアのライセンスをOSDなものにするのは、同じように「独占するコスト」と「独占するメリット」を考えた時に、独占するコストの方が大であるということがあります。今時、ソフトウェアを販売して金にするというのは、なかなか大変です。それよりはオープンにして独占するコストをゼロにしてしまった方が、低コストな分楽です。ソフトウェアを販売する会社であればその辺はちゃんとビジネスが組み立てられるのでしょうけど、コンサルやりーの、いろんな開発やりーの、受託やりーの... という状況だと「わざわざ」ということになってしまって手間です。それに、元からソフトウェア販売のビジネス組んでいても儲け辛い世界に、片手間で参入して収益を上げ続けられるわけもありません。それよりは、タダソフトとして「御自由にお持ち下さい」状態にしておいて、受託やコンサルの「撒き餌」にしてしまった方が、儲かる可能性は大です。つまり、

営業ツール

として使った方が良いわけです。

会計システム Hieronymus(3) 弊社オープンソースの考え方と展開

そんなわけで、弊社では諸々の知財は基本オープンにしてしまった方がメリット大だという判断をしているわけです。

もちろん副次的な意味として社会貢献があるのは確かですし、それは知性の涵養になるというのは事実でしょうが、それはあくまでも副次的な効果と考えています。

期待する効果

知財をオープンなものにすることで、以下のことを期待しています。

  • 営業ツールとなりえる
  • 技術に「自由」が与えられる
  • 技術を広めやすい

これらについて、もうちょっと詳しく説明します。

営業ツールとしての技術開示

営業ツールとなるのは、既にちょろちょろ言っているとおりです。「弊社は技術があります」と言った時のエビデンスとなってくれます。また、そういった「オープン技術」のメディア経由で宣伝がされて行くことも期待できます。

IT業界には「流行りの技術」というものがあって、ちょっと前ならIoT、その前だとウェブ技術、今時なら人工知能... 時代時代に流行りの技術があります。そして、目ざとい会社は「弊社にはそのソリューションがあります」と喧伝します。

その中で、それが本当であるというエビデンスはあるのでしょうか? もちろんあるところも大量にあります。でも、「流行りの技術」は「急ごしらえできる技術」ではありません。どれも世間が注目する前から始めていないと、流行り始めた時に「あります」と言うのは難しいですし、逆に急ごしらえできるものであれば競争力がありません。流行りの技術で競争力を持つためには、何らかのアドバンテージを持っている必要があります。それを証明するためのものとして簡単で有効なのは、保有している技術の開示ではないでしょうか? それが他者検証可能な形での開示であれば、エビデンスとして「強い」ことだと思います。

そんなこともあって、いろんな形で技術を開示することにしています。

技術に自由を与える

公知となった技術やオープンソースとなったソフトウェアは自由が与えられます。つまり、誰もが自由に使うことができます。

一度自由になった技術は、自由に拡散させることが可能です。厳密に言えばOSDライセンスの中にも無限の自由を与えるものとそうでないものとありますが、弊社で選択する技術は無限の自由を与えるものです。そうすると、多くの人がその技術の恩恵にあずかることが出来ます。

技術閑話(第7回)AGPLの勧め

これで一番得をするのは実は自分自身です。これは、「自分の開発した技術(ソフトウェア)」を持っていて、何度か転職やM&Aを経験した人ならわかると思います。せっかく自分が技術を持っていても、それが会社に帰属(サラリーマンの業務開発ならそうなる)して非公開になっていれば、転職したら開発者自身であっても触れなくなります。転職しなくてもM&Aがあった場合、結果的に自分が触れなくなったりするかも知れません。またそういったことでなくても、たとえば顧客に提供することになって契約によって自分が触れなくなることもあります。技術を自由にしてやると、そういったことが避けられます。私は何度かこれで命拾いに近い経験をしています。

技術は産み出したら終わりではありません。育てて活用してやらなければ消えてしまいます。自由を与えることは、育てて活用する機会を増やします。「野良」になればなったで、勝手に育ったり増えたり(!!)するかも知れません。

技術を広める

ライセンス料を取らないで公開された技術は広まりやすいです。これはわかりやすいと思います。

技術者ですから、「金になる」ことも大事ですが「自分の技術が広まる」ことも大事です。自分の成果が誰かに使われるのは嬉しいですよね。

ライセンス料を取らなくても広まらない技術もあるでしょう。その時は「この技術は少なくとも今は必要とされていない」ということがわかります。そこでの意思決定は技術そのもののことだけ考えていれば良くなります。「ライセンス料が適正なんだろうか?」と悩む必要はなくなります。

まとめ

そんなわけで、一見「ノーガード戦法」のように見える弊社の知財の扱い方ですが、かけられるコストに対するメリットの最大化によるものです。決して軽視しているわけでもなければ、単純に金がないから手をかけないというわけでもありません。実のところ、私は過去の経験から知財管理にはとてもうるさい方です。

みんなにそうしろというつもりはありません。でも良いなと思ったら遠慮なく真似して下さい。

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