ハードウェアからサーバ・アプリまでワンストップで開発

開発の適正価格について

正直なところです

こういった話は企業のブログには滅多に書かれないことだと思います。そういった意味では非常にセンシティブな話なので、このエントリだけが独り歩きされても困るなぁとは思います。とは言え、こういったこと抜きで「綺麗事」だけしか書かれないのも残念かなとも思います。そんなわけで、今回はある程度

ぶっちゃけ話

です。

ここのブログ内の自社広告には一応金額を出しています。

出しておいてナニですが、実勢価格とは乖離があります。出してる金額の方が随分高いです。

また、弊社は間接部門はありませんので、単純に原価積み上げで計算すると随分と安くなります。

じゃあいくらくらいが妥当かと言えば、正直よくわかりません。

Amazonの話

まずはわかりやすい話。

Amazonで「しまパン」のショップをやっている話は何度か書かいて来ました。

仕入れが海外ですから為替の影響を強く受けますが、元々仕入れそのものはそんなに高いものではありません。

当初、元が安いので安く売ろうと思っていました。近所のお店(ドンキとか)の値段と比較しても、そう大差のない価格にしようと。

これが大失敗でした。売れば売るほど赤字になります。

細かいことは書かないで項目くらいを挙げておくと、

  • 「Amazonで売る」ということそれ自体に経費がかかる
    FBA(Amazon配送)を使うと、倉庫代や手数料がかかります。やめればいりませんが、手間と信用の点で使わない手はないです。FBA使わないと出荷のための工数が発生します
  • ロスが出る
    海外の出荷の基準と日本で要求される品質は激しく異なります。日本人が納得しないレベルの商品はゴミにするしかありません。酷い時には8割不良になります。ロット全部NGだった時もありましたが、さすがにそれはクレームしました
  • 作業が結構かかる
    出荷のための作業(袋詰めとか)は販売価格と関係なくかかります。また、いろんな点で安い商品ほどかかります

というようなわけで、仕入れ単価は安くても商品としての単価はそんなに安くならないのです。極端な話、仕入れ単価が0であっても、そこそこの金額になります。

ある時これに気がついて、かなりの値上げをしました。自分達としても「高くないか?」という気がしますが、持続可能な価格となるとこれくらいになってしまいます。まぁ商品そのものが「趣味のもの」なので、高いと思ったら買われないというだけですから、無理して値下げすることはやめました。時々レビューに「高い」とつくのは厳しい気持ちになりますが、「品質にはケチがついてない」と前向きにとらえることにしました。

逆に言えば、こういった原価を押し上げる要素がない取り引き(卸しとか)であれば、もっとリーズナブルな価格提示もできるはずです。

ソフトウェアの受託開発の話

ソフトウェアの受託開発の費用も割と簡単です。これには仕入れもなければ倉庫等もありません。原材料もありませんから、形(科目)は様々ですが、結局のところ「ほぼ人件費」ということになります。これに家賃等がくっついて原価です。

間接部門があればそこの費用が原価に載りますが、弊社には間接部門はありません。

普通の会社では「サラリーマンは給料の3倍売り上げてとんとん」という話がありますが、弊社だとこの倍率はもっと下がります。まぁ人件費と給料がイコールじゃないとかいろいろありますけど。

そうなると、実のところ表に出している単価ほどはいらなくなります。別に家賃が極端に高い事務所でもありませんし、開発に凄いPC使っているわけでもありません。

だったら人件費プラスアルファくらいの金額でやって行けるかと言えば、そうは行きません。

まず、弊社だと「受託仕事がない期間」があります。人数が少ないと、連続的に仕事を回すには難しいです。でも、外からお金になる仕事がない時であっても、維持しなければなりません。いろんな開発はその間にやっているわけなので遊んでいるわけではないですが、目先に売るものを作っているわけではありませんので、その間の費用は何とかしなければなりません。

ここのエントリには直接受託仕事の話は書けませんので、「試した」「作った」というエントリはそういった「受託仕事がない期間」にやったものです。つまり、そういったエントリが多い時は受託仕事がないということです。弊社はエントリを書くことそれ自体が営業行為なので、エントリのペースが早い時もそういった時だということです

ある程度の規模の仕事で長く続くものであればそういった心配はなくなりますから、安い単価の提示もできます。この辺は程度の違いこそあれ、どこも似たようなことになるのではないかと思います。「短納期割増」的なものは、そういった意味もあります(他にも意味はあります)。

仕事の規模が大きくなれば、当然弊社のマンパワーだけでは出来なくなります。そうなると、外部に依頼する必要があります。

外部に依頼する場合、その相手の原価構成がどうであるかと関係なく、提示される分だけの支払いになります。弊社が受ける時の金額があまりに安いと、外部に依頼して逆ザヤになってしまいます。そうなると外部の力が使えなくなりますから、その仕事は出来ないということになります。ですから、弊社のような規模の会社がある程度以上の仕事をしようと思ったら、それなりの単価でないと受けられないということになります。もちろん外部への費用を下げる努力はするのですが、「値切る」わけにも行きませんからね。

また非常に残念なことなのですが、あまりに安い単価を提示すると「その程度の会社」という扱いを受けることが多々あります。また、無理やり資金を調達したようなところの仕事が来たりします。そういった仕事はいろんな要因が絡んで残念なことになることが多いです。そういったことはお互いに避けたいです。

ハードウェア開発の話

ハードウェアの開発となると、ここに部品代とか外部の工賃とかの費用が乗ります。さらに、試行錯誤の費用も必要になります。

部品代は厄介で、たいていの部品は数量によって価格が大きく変動しますし、数量によっては扱ってもらえないこともあります。また、あまりに長納期の部品となると、使うのを諦めて代替部品を使うことになったりして、また費用が変わります。「その先」の工程が見えていると、納期も含めて手当が必要かどうかを考えねばなりません。

またハードウェアは自社設備だけで完成させることは困難です。プリント基板も実装も、試作レベルであっても外部に委託することになります。「それ以外の部材」も同じです。測定とかも費用が発生します。これはそのまま原価に載ります。

また、ハードウェアはどうやっても試行錯誤の部分があります。仮に最初から全く間違いがない設計が出来たにしても、部品が入手できないようなことが起きればやり直しです。また、今時の回路は細かいので、高々実験であってもちゃんと「製造」しなければならなかったりします。もちろんいろんな努力をしてここを減らそうとするわけですが、できない時はできないものです。

ソフトウェアの開発とそのまま比較ができないくらい、ハードウェアの開発の費用計算は難しいです。製造を外注した時の経験値と試行錯誤回数の実績と部品代を載せたものをベースに検討することにしています。

結局

難しい難しいと言ってもしょうがないのですが、内製比率が高いほど計算しにくくリスクもあります。外注費は高い安いを言わなければ、見積りしやすいです。

一番費用的に双方都合が良いのは、「こちらはリスク分を抜いた見積りをするので、何か起きたら相談させて下さい」ということになります。それが一番安くできます。試行錯誤のリスク分を想定するか実績ベースにするかを考えれば当然そうなりますね。ですから、これが出来る程度に信頼関係が構築済みで、かつ長期の開発で資金繰りに無理のないペースの支払いがあれば、かなり安い見積りが出せます。本来の意味での「お友達価格」とはそういったものです。

とは言えそれはある程度の信頼関係が必要で、「何か起きた」時に「わかってたことですよね」と言われたら、それまでの見積りとか予算とかは全部チャラです。そうなると双方困るので、その分を積み上げることになるわけですが、ものを作る時にノーリスクにするのは現実的でない費用積み上げが必要になってしまいます。

そういった極端なことを抜きに、「程々のリスクは双方覚悟の上」というお約束も含めての価格が、ここの広告に書いてある価格ということになります。背景を知らない相手への「一見さん価格」がここの広告に書いてある価格です。あまり外れたら「相談」するしかないですが、基本的にはもらった範囲でリスクも含めると。

逆に「言い値」は楽だったりします。「言い値」だと「その範囲でやる」ということになるので、範囲をどうするかをベースに議論することになりそれは技術の問題ですから、自分達のフィールです。とは言え、これは試作の時の話であって、プロダクションには向いていませんね。

おわりに

ここで広告している価格は実勢価格と乖離があるのですが、それはこういった事情からです。実際に見積れば、また違う単価になるだろうと思います。

ただ、「まずはお見積り」だと相場感が全くわからないところで「全て時価」とか言われてるようなものですし、面倒な思いをされるだろうなということから、その仕事で一番高そうな単価を提示しているわけです。後でぼったくりと言われても困りますから。

ただ、この金額も全く嘘というわけでもなく、それが「嘘」になってしまうかどうかは、リスクの算定と開発環境に依るものが大だということです。「嘘」になってしまうような仕事を歓迎します。儲けたいとは思いますが、ぼったくりたいわけではありませんから。

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